一期一会
「よくわからないけど、お戒壇めぐりというのかな、真っ暗な地下通路で、傍に居たいい感じの女性が手を握るわけ」
「いいじゃない。でも、真っ暗か」
「出口でびっくり!手を握っていたのは男だった。お互いに思い違いしてた」
「ぞー」と、しのぶ。
その直後、二人で笑った。少し遅れてさえらも笑った。仲間外れにされたくないという気持ちなのだろう。
「じれったいね、この山葵。でも、これだと辛さと風味が増すのね」
「かなり効きそう。涙が出るかも」
漸くすりおわって蕎麦つゆの中に山葵を入れて食べた。ツーンと鼻にきたが、美味い。黒っぽい蕎麦は打ちたて、茹でたての、独特の弾力がある。
「ここで食べたら暫く関東では食べられないね。まるで別もの」
「なま蕎麦というより生き蕎麦ね。本物の感動!」
近くの席があいたと思ったらすぐに別の客がきた。