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一期一会

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恐らく観光ガイドブックや旅の雑誌に紹介されているのだろう、客の大部分は観光旅行中の人々らしい。店内は満席の盛況で騒々しい。
上高地などでもそうなのだが、周囲から聞こえてくることばは圧倒的に関西弁が多い。そして、若い女性の姿が目立っていた。
「杏の里って、どこにあるの?」
「千曲川の流域でしょう」
「長野県よね」
「長野市に近いのかな?」
「善光寺があるよね」
「そうです。あのお寺の中に暗い地下道のようなところがあって……」
「お化けが出る?」
「もっと怖い想いをしました。あっ蕎麦がきた」
瀬戸物のおろし金?の上で山葵をする。なかなか難しい。しのぶはさえらから山葵を取り上げた。香辛料に類するものは全て苦手らしい。蕎麦もさえらの分の一部を早川のせいろに移した。
さえらは少し驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔になった。
作品名:一期一会 作家名:マナーモード