一期一会
凄い陽射しだった。青い空と白い雲が眩しい。大きなギンヤンマが、車と一緒に移動して行く。と、思ったがすぐにどこかへ消えてしまった。窓を閉めていても蝉が騒々しい。
鮮やかな緑のそよぐ水田が広がっている風景の中に、黒々と背の高い針葉樹に囲まれた神社が多く見受けられる。
そして、狭い墓地の多さに、早川は改めて感心した。道祖神も数えたら相当のものだろう。土蔵のある家がある。以前は茅葺だったのを、スレートに貼り替えたらしい住宅が殆どである。新建材で建てた新しい家も少なくない。寂しいことだと、早川は思った。
工場か倉庫のようなものもある。ほかの場所に作れと云いたいが、景観維持などということは役所は考えていないのだろう。
蕎麦屋の近くに着いた。コインパーキングに車を入れ、すぐ近くの店に向かった。丈の高い多くの樹木に囲まれ、中庭を抱くように大きな旧い家が建っていた。
靴を脱ぎ、着物の若い女性に案内されて畳の上を歩いて行く。何とか三人で席に着くことができた。冷房がないのに我慢できないほど暑くはなかった。壁も太い梁が目立つ天井も、長い年月を経て黒光りしている。