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一期一会

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車に戻って報告すると、携帯電話を持っていたしのぶは、
「今電話したら、早川さんのお母さんが教えてくれました。ポストのところを右折でしょ」
それを聞いた早川はやや気分を害したが、
「何とか辿り着けてよかったですね」
 と、ぎごちない笑顔で応えた。
 時刻は午前十時になるところだった。
「やっと着いたか」
と、さえらが云った。
その辺りを通過する車は全くなかった。道路の左側一杯に寄ってからポストの手前を曲がった。極端に狭い道だった。両側に民家を囲む生垣があった。早川は緊張してゆっくりと車を進めて行った。
神社は相当に古いものらしい。鳥居やその奥の祠には、見たこともない漢字が並んでいた。
漢字につよい早川も、まるで読むことができなかった。神社の背後には黒々と丈の高い樹木が鬱蒼と多い被さるように茂っている。神社の横の空き地に、小型のブルドーザーが見える。造成中の墓地がそこらしいのだが、何日も工事が中断されているような気がした。
早川はそこに車を入れ、しのぶとさえらをおろした。
作品名:一期一会 作家名:マナーモード