一期一会
「ああ、日曜日にご乗車いただいたかたですね。失礼いたしました」
女性も笑った。その女性を客として迎えたのは、この前の日曜日の深夜だった。
乗務員が客の顔を見ることができるのは、乗車前と支払いのときだけである。その上夜間の場合は、暗いので相手の顔を把握しにくい。ルームミラーばかり見ていたら事故になる。だから乗客の顔が映らない角度にしていた。
早川は目の前の女性が、先夜の印象を裏切って美しいので驚嘆していた。
「先月の初めに、友達が亡くなってしまいました」
その話題に早川は再び驚かされた。女性はそのことによって精神的に落ち込んでいる気配である。
「……そうですか。梅雨入り前のことですね」
「明日が、四十九日なんです」
「ということは、納骨が明日かも知れませんね」
「お墓がないんです」
この女性は早川に頼みたいことがあり、だからこそ彼を追ってきたのだろう。しかし、早川は墓地などに関しては、決して明るくはない。