一期一会
水銀灯の明かりが眩しい。談合坂サービスエリアには、大型トラックがたくさん停まっていた。重低音のアイドリングの音が、大勢の僧侶たちによる読経を連想させた。
トイレからでてきた早川は気温の高さに改めて驚いていた。十年くらい前にきたときは、真夏でももっと涼しい場所だったと思う。このままどんどん平均気温が上昇すれば、地球上の氷も殆ど解けて海水面も上昇し、津波や台風などによる水害も頻発するに違いない。
売店の近くにしのぶの姿があった。見惚れてしまうような素晴らしいプロポーションである。互いの姿を認めて歩み寄った。
「缶コーヒーを買ってきました」
しのぶの笑顔は余りにも好ましいと、早川は思っている。彼は幸運のさ中に居ると思う。
「ありがとうございます」受け取るときに指が触れ合った。凝視め合った。数日前までは会ったことも相手なのだと思った。
もうすぐ土曜日の午前一時半になる。早川が遅れて車に戻ると、車の後部座席ではさえらが鼾をかきながら眠っていた。
しのぶはまた缶チューハイを出してきてのんでいる。
「さえらさんは眠ってしまいましたね。はい。おつまみ」
早川は買ってきた野沢菜おやきをしのぶに渡した。