一期一会
さえらはリュックサックの中を探し始めた。早川は室内灯を点灯した。
「毎年六月に障害者の運動会があるんです。今年は二十五メートル走で一位だったんです」
さえらは赤白青のベルトがついた金色のメダルを探し出して早川に見せた。
「おう、凄いね。やったね!」
「一番だったんだから。一番だったんだから」
さえらは嬉しそうだ。
「さえら頑張ったね。来年も頑張ってね」
「うん」
さえらはプラスティックのケースにメダルをしまった。
「十二時五分に中央高速に入りましたね」
「すみません。よろしくお願いします」
交通量は極端に減っていた。暫く行くと、道路の照明がなくなって真っ暗になった。黒々とした山並みに包まれた。
登りになるとほかの車はスピードダウンする。早川たちの車は時速百キロのまま快調に走って行った。
*