一期一会
明日への希望
早川たちの車の周囲を取り囲み、長距離輸送の大型トラックが轟音をとどろかせて走っている。通行料金無料化のせいで先程までひどい渋滞だったが、漸く流れ始めた八王子バイパスを走っている。時刻は午後十一時五十分を過ぎたところである。この感じだと夜半を少し過ぎた頃に中央自動車道に入るだろう。
狭い後部座席で、忍田さえらはおとなしくしていた。松田聖子とピンク・レディーが好きで、いつもどちらかをCDウォークマンで聴いているらしい。
「さえらちゃん。今は松田聖子?」
早川が大声で訊くと、
「そうだよ」
と、さえらは不明瞭な発音で応えた。
「そのCD,車のステレオでも聴けるよ」
さえらは返答をしたが、早川は聞き取れなかった。
「何て云いました?」
「このままでいいって、云いました。
早川さんが買ってくれたCDウォークマンだからだと、云っています」
「そうですか……ちょうど十二時過ぎに八王子インターです」