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一期一会

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「一回目ね。何回やるかな」
しのぶは笑っている。
「もうやりません」
「本当?」
「慌てるとね、間違えそう。左がウインカー。左がウインカー。左がウインカー」
早川は笑っていない。右方向から嫌がらせのようにぽつりぽつりと車がくる。無理をすれば入れるタイミングだが、どんな場合でも無理は絶対にしないと誓ったのだから、無理はしない。自らの過失で乗客が負傷したら転職する。そう、決めていた。但し、ほかの職種では採用されそうもない。

          *

 自宅に立ち寄った早川はパソコンとエアコンに電源を入れた。髭そり、タオル、デジカメ、カフェイン入り清涼飲料二本をバッグに入れ、そのほかに一本をのんだ。パソコンサイトのマイページの日記に、土、日、長野へ行くと書いてUP。ミニメール、伝言は見ないでシャットダウンした。免許証入りの財布に、なけなしの僅かな金を入れた。エアコンの電源を落とし、照明を消して外へ飛び出した。
作品名:一期一会 作家名:マナーモード