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鬼城 地球
鬼城 地球
novelistID. 15205
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L.H.B.  ~Left Hand is Black~

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「で……パレードが来たら、僕が出ていって戦う」
「シンプルで悪いねー、仙ちゃん」
「ったく、来るなって言ったのによ……」
「槇さん、いい加減に機嫌直してくださいよぉ……上の人達も仙ちゃんに頼もうとしてたんですから」
「だからってなぁ、受験のかかってる子供にこんなことを頼む警察も落ちぶれてるぞ!」
「伸太郎さん……それ、僕を遠回しに貶してます?」

 現在、夜の十一時を過ぎたころ……
僕と伸太郎さんと伸太郎さんの助手・坂井(さかい) 政義(まさよし)さんと一緒にいた。

伸太郎さんと言えば、僕が家を飛び出して来たのを未だに快く思っていなくてぶつくさと文句ばかり言ってるし、政義さんも最初はなだめていたものの今は同じことを繰り返しているだけで、正直頼りない。

 僕はため息をついた。

「おい、お前のために言ってるんだぞ? なんだ、そのため息は!」
「伸太郎さんだって、本当は僕の力が欲しかったんでしょうが……」
「う……んなわけ……ない、ことはないが」
「僕が必要だと一ミリでも思ってたなら、もう僕がここにいることになんの反感も持たないでよ……伸太郎さんは実際、上の人達と同じように考えてたんだから」
「……仙ちゃん」
「それに一日で終わらせれば受験勉強なんてまた始められるよ……」

 そう僕が言ったら、伸太郎さんは文句を言うのをやめた……
一体、どっちが大人なんだか……

 そう思ったころ、政義さんのケータイが鳴った。

「はい……え、笛吹き男が単体でうろついてる!?」
「え!?」
「チャンスだ、パレードをやってるときに戦うより単体の方が巻き込まれる人がいない」
「はい……はい、わかりました……仙ちゃん、どうやら方角的に笛吹き男はこっちに向かって来てるみたいだ」
「わかりました、それじゃあ姿を確認できしだい戦闘に入ります!」

 僕は、気合いを入れる意味で左手にしてある白い手袋をしっかりとしわのないように伸ばした。

 笛吹き男の登場は、実に静かだった。
くるくるまるで一人でパレードでもしているように踊りながら僕らが張り込みしていた道路に姿を現した。

 白のコートに身を包み、顔には笑っているようにも悲しんでいるようにもみえる仮面をつけている。
その仮面は間違いなく、先日僕らが見た【ハーメルンの笛吹き男】の仮面だった。

「行ってきます」
「仙ちゃん」
「はい? なんですか? 伸太郎さん」
「……気をつけてな」
「はい!」

 僕は笛吹き男の前へ出て行った。

「止まれ! 笛吹き男、お前を近隣住民拘束及び公務執行妨害で逮捕する!」
「……ヤッと、来てくレタ」
「え?」

 踊るのをやめ、僕を見て発せられた笛吹き男の声は、変声機か何かで人間の声に聞こえなかった……
そのせいかどうかわからなかったが、僕の背筋に冷たいものが走った気がした。

「待ってタヨ、望月 仙太郎君……君ガ来るトキを」
「待ってた? 僕を?」
「ソウ、君こそコノパレードを楽しマセるキーパーソンさ」
「何を言ってるかよくわからないけど、どうやら同行はしてもらえないってことでいい?」
「同行? 君モ変な現実ノ味方?」
「現実の味方? 一体なんのことを……」
「シナイ、同行シナイ……君ガ仲間にナレばパレードは最高! 邪魔サセない」

 そういい、笛吹き男は仮面と同じく美術館から盗まれた笛を取り出し、おもむろに吹きだした。

「っ!? くそ!」

 一瞬しか聞かなかったその音色は、不気味としか言いようがなかった。
その上、頭が割れるような痛みを瞬間に感じた。
僕はこのままではどうにもできないと思い、左手で音の波を操り耳には笛の音は届かなくなった。

「ヤルね」
「笛吹き男……お前の目的はなんなんだ?」
「この世界に復讐するためさ」
「え?」
「復讐だヨ! この世界ニネ!」

 笛吹き男の声が一瞬、誰かの声に似ていた気がした。
けど、次に聞こえた声は今までの変わらない変声機の声だった。

「復讐? この世界が一体何が気にくわないんだ?」
「現実に皆囚ワレテいるのさ、子供のヨウニみんな非現実を何故求めナイ? 現実コソ非現実、現実は人ヲ冷たくスル……今、この世界のヨウニネ」
「笛吹き男……お前の言っていることはデタラメだ! 現実こそが俺達の生きる世界なんだ! その世界に復讐する権利なんてない!」
「ク……ククク、君はソノ左手を持ってイナガラ現実の世界ニ生きると言ウノカイ?」

 その瞬間、僕ははたと左手の力を止めてしまった。

耳に入ってくる不気味な音……
一瞬のうちにして僕は割れるような頭痛に耐え切れず倒れた。

「ぐぅっ……うぅ……」
「ヨク考えて見るトイイヨ、君のソノ左手は現実にはアリ得ナイ手だ……君コソ、このパレードの先導者サ」

 その言葉は、苦しんでいる僕の頭に何故か強く入ってきていた。

 僕はそのまま気絶し、目覚めたら病院のベッドで朝を迎えていた。

 ふと机に置いてあった記事に目がいった。
予想した通り見出しはこうなっていた。

 【パレードの人数減る傾向なし! 百人突破!】