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鬼城 地球
鬼城 地球
novelistID. 15205
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L.H.B.  ~Left Hand is Black~

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「お兄ちゃん……この記事見てよ」
「ああ、見た……」

 今日の朝刊の一面は、こうだった。

 【抗議? デモ? 真夜中のパレード!】

 昨日の十二時頃、仮面をつけた男を先頭に約六十人がそのあとに続いていったらしい。
その仮面の男のしていた仮面は、盗まれた【ハーメルンの笛吹き男】の仮面で、警察官は通報によってすぐそのパレードを制しようとしたが、なんとその警察官も操られてしまい、一緒にパレードに参加してしまったのだという。

「こんなことって……」
「あるさ……僕みたいな手があるんだから、なんでもありなんだよ……この世の中って」

 僕は、昨日落ちてきた紙を見た。

 パレードがこれをさしているなら……今六十人、百三十人までそんなに残されていない。
これは、もう受験勉強だの言ってることじゃない……これは、僕が……いや、僕の左手が止めなければならないことだ。

「神奈、伸太郎さんの所に行ってくる」
「だめだよ、お兄ちゃん! 勉強しないと!」
「いや、これは僕がいかないといけない事件なんだ……神奈、わかるだろ? こんな非現実的な事件は僕の左手みたいな非現実的な物しか食い止められないんだ」
「お兄ちゃん……」
「僕は、誰かの命を犠牲にしてまで現実的な事はしてられない……神奈、許して!」

 そう言った時には、神奈の言葉を待たずに玄関へ出て行って伸太郎さんの所へ急いだ。
神奈なら必ずわかってくれると思ったからだ。
何故そこまで妹を信じられるかって? 僕と神奈はお互いに信じあえる血のつながった家族が僕ら二人しかいないから……
これは、決して自慢じゃない……僕らは、火事で両親を失って以降、お互いしか信じてなかった時があったから……

 今の信頼を得ていると思う。

 あの火事がなければ、僕らは今の信頼はきっとなかった。
でも、あの火事がなければ……

 両親は死んでいなかった。

 何事も犠牲がなければ得られない。

 僕の左手も同じだった……