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サイレント-交叉-

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夕暮れが早くなった。
というか、もうすでに辺りは暗い。
遠くの景色にライトは浮かんで見えるが、女の待つ所は明かりがない。
数歩離れては、顔の識別も困難かもしれない。
こんな所に待つのはただ逢いたいという気持ちだけ。
ふと、誰かが通り過ぎようものなら季節はずれの幽霊かと思われるに違いない。
いや、待つ相手は思わないかも知れないと女は思った。
そんな非科学的なことはきっと頭にない理系の男だ。
そうだ。だからこんな怖がりの女にこんな所での待ち合わせもさせるんだ。
それにしても、来ない。
冷えた手で左の袖口を上げる。
暗くて時計の針も読めやしない。
コートのポケットに手を突っ込み、携帯電話を開ける。
デジタルで表示された時間を確かめる。
約束の時間は、過ぎている。
約束?いや女が勝手に定めた時刻だ。
男がそのメモメールを見たかも、『行けるよ』と返事を受け取ったわけでもない。
コツコツコツ・・・
靴音?女性のヒールのその音よりは、低いし、重い。
男性だろう。待てよ。男ならば、おそらく歩いては来ない。
女は、不安と僅かな恐怖が体を縛る。何処かに身を隠したい。
しかし、下手に動けば、相手は人が居ることに気付き、迫ってくるかもしれない。
女は、携帯電話を開き、僅かな明かりを示すと同時に信頼の置けそうな相手の
電話番号を表示させた。
いつでも【発信】出来るよう指で構える。

作品名:サイレント-交叉- 作家名:甜茶