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なんでも治す薬 二、

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「おっちゃん、こんにちは」
 その姿をみつけるやいなや、かなちゃんは駆け寄り、元気にあいさつをしました。
「あぁ、さっきの嬢ちゃん」
 おじさんは嬉しそうに言いました。
「大丈夫なんかい? 一人で出てきて」
「はい。お父ちゃんもお母ちゃんも、家におりませんさかい」
 こうやって答えている間にも、かなちゃんは目の前にある薬のことが、気になって気になって仕方がありませんでした。
「そうなんかぁ。嬢ちゃん、やるなぁ」
 おじさんはにこにこしながらうなずきました。
「おっちゃん、これ、なんぼですか? 」
 おじさんの口から次の言葉が出る前に、かなちゃんはいち早く聞きました。
「あぁ、これは、千円や」
「千円!? 」
 かなちゃんはポケットの中で、財布に伸ばしかけた手を握りました。とうてい、かなちゃんのおこづかいで買える金額ではありません。 
(ほな、あかんなぁ……)
 かなちゃんはがっかりしました。いくら欲しくても、お金が足りないのでは、あきらめるしかありません。
「すんません、おっちゃん。買いたいんはやまやまなんやけど、かなのおこづかいや、買えそうにないですわ。ほな……」
 そう言って、かなちゃんがおじさんの前を去ろうとした、その時でした。
「ちょ、ちょっと待って。嬢ちゃん、今、なんぼ持ってるん? 」
 おじさんに呼び止められ、かなちゃんはうつむきがちに答えました。
「百十円です……」
「百十円か」
 おじさんは、少し考えるような素振りをした後、またにっこりと笑って言いました。
「ほな、この薬、百円にしたるわ」
「ほんまですか! 」
「もちろんや」
 おじさんは、さっきよりもにこやかに答えました。
「ありがとう、おっちゃん! 」
 かなちゃんは大喜びで、迷わず薬を買いました。
「なんの、なんの。せや、ここで、飲んでみるか? 」
「えっ、ここで、ですか? 」
 かなちゃんは少し困ってしまいました。飲んではみたいけれど、水がないのです。
「大丈夫。これ、水がのうても飲めるねん」
「そうですか。ほな、飲んでみます」
 かなちゃんはびんを開け、薬を一錠取り出すと、さっそく飲んでみました。
 すると、どうでしょう。さっきまでの病気が、どこかへ吹っ飛んでしまったようです。
「うわあ! なんか、元気になってきた! 
 ありがとう、おっちゃん! 」
 すっかり治ったのが嬉しくて、かなちゃんは走って帰りました。
作品名:なんでも治す薬 二、 作家名:LUNA