なんでも治す薬 二、
二、
布団には入ったものの、かなちゃんの頭の中は、ある一つのことでいっぱいでした。
それは他でもない、あの薬のことでした。
(お母ちゃんはあないなこと言うてたけど、あの薬、ほんまににせもんなんやろか)
でも、そんなはずはないような気がします。
なぜかは分かりませんが、あの人は、どうもどろぼうさんのようには見えないのです。
いても立ってもいられなくなったかなちゃんは、こっそり布団を抜け出しました。もう一度、あのおじさんに会ってみたいと思ったのです。
思い立ったが吉日。かなちゃんはそうっと戸を開けて、部屋の外に出ました。
抜き足、差し足、忍び足。隣の部屋のドアの前までたどり着くと、そのすき間から中をのぞいてみました。
お母ちゃんはいません。
でも、喜ぶのはまだ早い。もしかすると、台所にいるかも知れません。
かなちゃんは素早く部屋の中に入り、自分のおこづかいが入った財布をポケットの中に押し込みました。
そのまま一階に下りていき、台所の戸を細く開けて中をのぞいてみました。
(しめしめ、お母ちゃん、おらへんぞ)
それに、お父ちゃんが帰って来るまで、まだ十分時間はあります。
(さっと帰ってきたら、大丈夫や)
かなちゃんは急いで台所を抜け、外に出ました。
作品名:なんでも治す薬 二、 作家名:LUNA