なんでも治す薬 二、
「ただいまー! 」
うちに帰るなり、お母ちゃんの怒鳴り声が飛んできました。
「かな! あんたどこ行っとってん!? 病気やっちゅうのに……」
「大丈夫、大丈夫。かな、もう元気になってん」
ほら、ほら、と、かなちゃんは、飛んだり、跳ねたり、でんぐり返りしたりしてみせました。
「そりゃあ分かったけど、なんで、そないに急に? 」
「ふふん、それはなぁ」
かなちゃんはいたずらっぽく笑うと、ポケットの中から、さっきの薬を取り出しました。
「これのおかげやねん」
お母ちゃんは驚きました。
「これ、さっきのやん! こないなもん、飲むもんでないわい。何が入っとるか、分からへんのやさかい」
「だーいじょうぶやって! めっちゃ元気になったもん。痛いとこなんか、一つもないで」
ようやくお母ちゃんも、薬の効き目を信じてくれたようです。
「ほな、ええんやけど……。
って、かな、あんたそれなんぼしたん? まさか、ただではあれへんやろ」
「うん、ほんまは千円やってんけど、かなが百十円しか持ってへん言うたら、百円にしてくれた」
「千円から百円!? 」
お母ちゃんはすっとんきょうな声を上げました。
「ゼロ一つ違うがな! それ大まけやで。ちゃんと、お礼言うた? 」
「うん」
かなちゃんはうなずきました。
「ほな、ええわ。なくさへんように、ちゃんと持っとくんやで」
「うん」
かなちゃんはびんをポケットの中に、しっかりとしまいました。
作品名:なんでも治す薬 二、 作家名:LUNA