京都にて、ひとり
あれは夏だったろうか。同僚の1人からドライブに誘われ、その後花火大会にも行った。そして交際を申し込まれたが、私には……。
私の心にはやはりまだ拓明が住んでいた。
京都での暮らしの中には笑いに満ちた日々も沢山あったと思う。だけど私はいつも一人だった。いや、拓明と二人だったと言うべきか。
いよいよ田舎に帰る日、来た時と同様に写真の中の拓明を連れとして、私はひとり一年前とは逆に道を辿った。
地元に戻ると真っ先に彼のお墓に行った。
「ただいま、拓明」
次の言葉を言おうとすると突然涙が溢れてきた。
「私、まだ拓明のそばに行けないで生きている。ごめんね」
心の中で一年間の報告を済ますと同時に、一年前の拓明との思い出が蘇り、私の胸を溢れさせる。いくら想っても拓明は戻ってこないし、私がそばへ行くことも叶わない。そう思うとまた一段と涙が止めどない。
「拓明……」
私は想いだけを残してその場を去った。
その後、波乱に満ちた人生を過ごしてきた今も、私はまだ彼のそばに行けないでいる。
しかしいつの時も彼のことを忘れたことはない。
もう少し残された人生を生きなくてはならない私。
あと何年、いや何十年かもしれないが、その時が来たら拓明は迎えに来てくれるだろうか。
その時まで、できる限り充実した人生を過ごそうと思っている。きっとそれを、拓明も望んでくれていると思うから。
了