アメンボ!! ~South vs. East~
西宮が出て行ったのを見計らったアメンボは、芦屋にすかさず聞いた。
「リュウが、本当に来たんだな?」
「ああ「鍵を渡せ」って」
「なんで、アイツが鍵の事を知ってるんだ」
「わからない、でも……これでわかったろ? 阪東の裏組織に属する生徒には、掛け軸が盗まれたことがわかってるんだ」
「ぐずぐずしてると、兵南が危ないってことか」
「ああ、それに阪東は本気で兵南を潰す気でいやがる……だけどよかったな、鍵はお前の首にかけてあって」
「そうだな、万が一を考えてよかった」
そう言って、首から紐を通してある鍵を取りだしたアメンボ。
「そういうお前は、鍵の在り処を言ったのか?」
「言わなかったからこんな風になってるんだろうが」
「……そうだな、ありがとうケン」
「ああ……だけど、リュウの奴すっかり変っちまった」
「高校が分かれてすぐは、暴力を振るうような奴じゃなかったのに……」
ここでリュウについて説明しよう。
リュウとは、本名・堺 竜一(さかい りゅういち)。
アメンボと芦屋と同級生であるとともに阪東高校生だ。
中学時代は、仲のいい三人だったが、高校受験でたった一人、堺だけが阪東に受かってしまったのだ。
「もとは言え、俺たちがいけなかったのかもな」
「ああ、兵南と阪東の関係がこれほどまでに酷かったとは思わずにあんな軽口を……」
「リュウも含めて、兵南と阪東の関係を俺達で治しちまおう!」
「ああ!」
そういって、拳を突き合わせたアメンボと芦屋。
「それはそうと、アメンボ……どこの鍵なのかわかったのか? えっと……」
「『とけさあてくけとな』」
「そうそう、それ……解けたのか?」
「勿論、この鍵の使える場所は『地下室』だ」
「『地下室』? どうやって解いたんだ?」
「アルファベットだ」
「アルファベット?」
アメンボの言うには、まずアルファベットを五文字を一列と考え、それを『あかさたな』に置き換えていくのだという。
例えば……『とけさあてくけとな』の『さあ』は
ABCDE FGHIJ KLMNO……
あいうえお かきくけこ さしすせそ……
これにより『さあ』は二つの文字で『KA』・『か』なのだ。
「で、どこの地下室だよ?」
「阪東の地下室だ」
「なんでなんだよ!?」
「兵南の地下室の鍵は、なくなっていない……これは、情報収集ルートは聞かれたくないが、阪東はここ二週間地下室の鍵がなくなってるらしい」
「本当にどうやって調べたか聞きたいな……でも、それが本当なら難易度はかなり高いぞ?」
「大丈夫、手は打ってある」
にやっと笑ったアメンボは今までにない、嬉しそうな笑い方をしていた。
作品名:アメンボ!! ~South vs. East~ 作家名:鬼城 地球