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鬼城 地球
鬼城 地球
novelistID. 15205
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アメンボ!! ~South vs. East~

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 翌日……この日、尼崎家にある男が来ていた。

「全く、一人暮らしで困ってた俺だからって呼び戻すなんてよっぽどだな、勇波」
「兄さんの時代にできなかったことだ、手を貸してくれるだろう?」
「その前に可愛い妹のためなら、なんでもしちゃうぞ?」
「可愛いは、いらん」
「んもー、そんなところも変わんないなー、でも好きだー!」
「あーもう、ひっつくな!」

 ある男とは、アメンボの兄・勇斗であった。
初めのほうに女装癖があると書いたが、それ以外にアメンボが呆れるほどのシスコンで、アメンボが高校一年生つまり勇斗と兵南に通っていたころ、勇斗はストーカーに近い行動を取っていたらしい……

「で? 結局は、俺の美脚を披露すればいいのか? しかも、阪東で」
「美脚言うな、確かに兄さんの足は細くて白いが……」
「勇波の足も綺麗だけどなー」
「話がそれることを言うな! というより、触るなー!」
「痛っ! あ、勇波に久しぶりに蹴られた☆」
「☆をつけるな! 気持ちが悪くなる!」
 
というようなことは、日常茶飯事な尼崎家である。

 アメンボの手とは、兄の勇斗を使うという手だったのだ。

 場所は変わり、兵南水泳部部室。
以前の騒動でいろいろ物が散らばっていたのも片付け終わり元通りになった部室で作戦会議が行われていた。

「作戦はこうだ、兄さんが女子の兵南の制服で校門に立つ、そこに阪東の生徒を引き付ける……その間に私とケン、トシは裏門から阪東に入る、勿論その時私たちは阪東の制服を着る」

 そう言って、アメンボは三着分の阪東の制服を取りだす。

「アメンボ……これ、どこで?」
「ちょっと、兄さんと手分けしてそこらの阪東の奴らからはぎと……ごほん、借りただけだ」
「頑張ったぜ!」
「アメンボ、お前凄いな……」
「兄さん程じゃないさ」

 アメンボ、既に善人なのか悪人なのかわからない。

「正直、着る気がしない……」
「だろうな、トシ……でも我慢してくれ」
「それかトシは、作戦に加わらない手もあるけど」
「いや、それは……しない」
「トシ、無理はするな……いやならいやと「無理じゃない!」

 滅多に大声を出さない西宮が怒鳴ったことに、アメンボを含め部室にいた三人は驚いた。

「と、トシ君?」
「一緒に行きたい、アメンボとケンと」
「トシ……」
「わかった、トシ……行こう!」
「ケン!?」
「トシが行きたいって言ったんだ、行こうぜ? トシなら絶対に力になってくれる」
「……トシ、いいんだな?」
「当たり前だ」
「よーし! 決まりだな、名付けて『惑わせの美脚・掛け軸を取り戻せ大作戦!』」
「「美脚は関係ないだろ!!」」

 こうして、『掛け軸を取り戻せ大作戦』は、翌々日に決行されることになった。