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鬼城 地球
鬼城 地球
novelistID. 15205
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アメンボ!! ~South vs. East~

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 水泳部室のドアを開けて中に入ったアメンボは、部長指定座席(本来は顧問が座る所らしい)の横に荷物を乱暴に置き、冷蔵庫を開けた。

「今日は、レモンティーだな」
 
 そう言って一段にぎっしり詰まった缶紅茶を一つ取りだした。
有名な缶紅茶の『ごごてぇー』はアメンボの昼のひと時には欠かせないものであるようだ。
そして、弁当をとりだし食べだす。弁当といってもおにぎり二つのおかずが少しの簡易弁当だ。それでよく女子高生にはありえない、がたいのいい体を保っていけるものだ。

「アメンボ……」
「おお、トシ久しぶりだな」
「うん、久しぶり……また、大変そうだ」
「らしいな……またお前の力を借りることになりそうだ、頼むぞ……文系学年トップ」

 静かに部室に入ってきたのは、先ほどあげた西宮だ。
余談なのだが、西宮はアメンボと芦屋以外とは無口なようだが、顔が整っており、さらには頭脳明晰。
非の打ちどころのない生徒だ。勿論、水泳も速い。

「うん……任せ「「センパーイ!!」」

 音なく入ってきた西宮の次に入ってきたのは、一年の姫路 千鶴(ひめじ ちづる)・千里(ちさと)の双子だった。
だが……現在の時刻は、一時を少し過ぎ。

「姫路ぃ! 今何時だと思ってるんだー!!!」
「「ごめんなさーい! 冬休みで忘れてましたー!!」」

 アメンボは、冷蔵庫から缶紅茶を取り出して、それを双子に向けて投げだしたのだった。
そう、これが芦屋と話していた事……アメンボは、一時半までアフタヌンティーを嗜む習慣を持っていた。
それを壊されることがアメンボは嫌いで、それを壊した者には缶紅茶を投げられるという始末……

「こんにちはーって、また先輩に缶なげられたの?」
「学習能力ねぇな、お前ら」
「それ言ったらかわいそうだよ、マサ君」

 そのあとゾロゾロと入ってきたのは、姫路と同じく一年生の水泳部員。言葉を発した順に名前をあげると、明石 新(あかいし わか)、加古川 正貴(かこがわ まさよし)、播磨 恂治(はりま じゅんじ)の三人。
これで水泳部員は、全員そろった。

「さて、みんなそろったな……まぁ、一時半まで時間があるから好きにしててく「アメンボ――――!!」
「……ケーン!!」
「アメンボ、それどころじゃねぇんだ! 今回の事件、マジで大変だ!」
「ケン……まず、落ち着いて……」
「一体、どうしたっていうんですか?」
「校宝が盗まれた!!」
「……なん、だと!?」

 カコーンッと缶を落としたアメンボ。
 
 兵南高校の校宝が盗まれる。単なる宝ならまだアメンボ達は冷静でいられただろう……だが、兵南高校の校宝は盗まれてはならない理由がある品だった。

「ケンさん……校宝ってことは、まさか……あの掛け軸ですか?」
「ああ、あの掛け軸がだ!」
「……兵南と阪東(はんとう)にまた亀裂が……」

 阪東とは、高校の名前で兵南高校と肩を並べるエリート公立高校だ。

「まさか、私の代でこんなことになろうとは……」

 タメ息まじりに空いていた缶紅茶を一気に飲み干してアメンボは、水泳部員とともに部室をでて職員室へ向かっていった。

 この時、アメンボ達を含む兵南高校生徒は気づいていたかった。
まさか、この事件が長年続いてきた戦いの終止符を打つとは思ってもいなかった。