狂言誘拐
とんでもないときにダジャレを云ってしまう癖はまだ健在だったのだなと、自分のことながら呆れると同時に中野は感心した。
「確かめてはいなかったの。結果を郵便で報告してもらうことになってた。驚いたねぇ。優奈は栗原の子だとわかったの。今よ!たった今わかったの!」
亜矢子は涙眼になっていた。
「じゃあ、旦那さんの子だったということですね。それは良かった」
「ええ、そうよね……良かったわ」
「と、いうことは、もう身代金は要求できない?」
「お金を出し渋る夫と交渉している暇はないわ。だって、お金はもう、ヘリに積んで来てる筈よ。急いで手術をしないと優奈は助からない……」
「じゃあ、予定通り決行ですね?」
「でも、ひどいわね、この渋滞。空いているから間に合うって誰かが云ってたけど、ここはどこなの?」
「まだ宮城でしょう。海沿いの道は失敗でしたね」