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狂言誘拐

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「食後に明日の打ち合わせをしましょう。初めての電話連絡ですから、失敗しないようにね」
「わたしから主人に脅迫電話したらおかしいわね。だから、お願いしますよ」
「そうですね。どの男から電話させましょうか?」
「……」
「つまり、誘拐犯人はグループなんです。三人の男たちです」
「そうよね。それが自然かもね」
「じゃあ、ちょっと失礼します」
 中野は浴室に向かった。

              *

 浴室から中野が戻ると、亜矢子はテレビを消した。風呂上がりの男は手筈の説明を再開した。
「犯人グループの大きな車に、亜矢子さんは監禁されている。中では男ふたりが常に見張っている。交替で残りのひとりが車を運転している。亜矢子さんはやはり、犯人たちに命令され、旦那さんを脅迫する。男たちは声紋分析によって身元がバレるのを恐れているからだった」
 そのとき、玄関の方で何か物音が聞こえた。ふたりの顔は蒼白になった。
「やっぱり脅迫はわたしね?怯えた声で、夫に指示を出すということね?」
「そういうことです」
 
作品名:狂言誘拐 作家名:マナーモード