「レイコの青春」 10~12
「皆さんにも、そんな時期がありました。
レイコさんも、うちの幸子もあの美千子さんまで、
デモに参加したくらいですから、
激動の時代からの良いメッセージのひとつだと思っていました。
若い人たちが、政治に興味を持つのは貴重なことだと思います。
それにしても、米軍支配下の沖縄まで行くというのは、
只事ではありません。
そのせいなのかしら、レイコさんまで、
おとなしくなってしまったのは・・・
でも、待ってるばかりでは、せっかくの資質が錆びてしまいます。
レイコさんに、『待っている女』は、似合いませんねぇ~
どうですか、彼の帰りを待っている間に、
もう一度だけ、あなたご自身の夢を取り戻されては。」
「それは、私に、
初心に戻って、もう一度、
保母を目指せということでしょうか?」
「ご明察です。
あなたも、やはり聡明な女性です。
これからの時代、女性が男たちと同じように、社会へ進出するためには、
ゼロ歳児や一歳児の保育施設が、もっとたくさん必要になります。
これからの時代の育児は、家庭内や母親だけの責任では足りません。
未来を担う子どもたちを育てると言うことは、
これからは、社会全体で責任を担うべきとなる大きな課題のひとつです。
眠ってしまったレイコさんの夢を、
もう一度、自分自身で揺すり起してみてはいかがですか。
保育は、これからの時代をつくりあげるためにも、
きわめて大切で重要なお仕事に、必ずなると私は考えています。
きっとあなたのやり甲斐も、そこで見つかると思います。」
「いまからでも、間にあうのでしょうか?」
「気がつけば、その時がいつでもスタートラインになります。
生きている限りは、その勉強は続きます。
それに、若いうちは無限の可能性があるはずです。
眠らせてもいけません、
なでしこ保育園も、まだまだ夜明け前ですが、
レイコさんにも、たくさんの可能性と時間が残っているはずです。
どうです?
レイコさんにもなにかが、
あらためて、見えてくるといいですね。」
こちらへいらっしゃいと、園長の目が誘っています。
こうなると、話好きの園長先生は、歯止めがきかなくなってしまいます。
覚悟を決めたレイコが、園長先生の隣へ腰をおろしました。
作品名:「レイコの青春」 10~12 作家名:落合順平