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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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【お前たちがどれだけ来ようとも、ここで好きなようにはさせない!】
 いつもにない強い口調で言うミシェル。
【どこにおろうとも関係ないのではないのか?】
【ここはミズガルズ…人間の世界だ!お前たちのようなものが来る所ではない!】
【ならば早くその娘を渡せ……その娘はわしらの王妃となるのじゃ。そのための神聖なる儀式の邪魔はさせぬ…!】
【地下の泉の時空を壊し百年もの間幽閉することが、ただの儀式だと?】
【そう……アース神族の穢れた血を清め、我らの住まうヘルヘイムへ連れてゆくのじゃ】
【穢れているのはお前たちであろう!】
【ふはは…我らはアース神族によって地下の世界へと追いやられた。我らは生きるために……この全ての世界を我らの国とせんがために……そのための戦いじゃ……
 おぬしは穢れた血が騒がぬか?わしらと同じ血……第三層の血であるぞ?】
【違う!僕はお前たちとは違う!】
【母上も罪なものよのぅ。子のことは考えもせんと……[ゴデ・オ・オンデ]なんぞ口にしおったがために、子は突然変異、周りの者は皆化け物扱いじゃ……辛かろうて……】

 [ゴデ・オ・オンデ]……北欧では[善と悪]という…
 夢の中で老人たちが言っていた、ニズホッグの血で出来た氷の宝石。
 そして…[あの少年]は、対狼一族専属特殊兵器……
 あの時『僕を消して』と泣いていた少年は……やっぱりミシェル…?

【黙れ!僕のことは関係ない!僕の話はするな!】
 ミシェルは両手を狼の方に翳(かざ)し、何かの呪文を唱える。そしてミシェルの手のひらから強い風と共に氷の粒が噴出す。狼たちはボスであろうその巨大な気配の狼の前に立ちはだかる。そして氷の粒が当たると同時に、その場所が凍りつく。動きを封じられた狼たちは次々に海へと落ちてゆく。

【さすがじゃの。この程度の狼ごときではその姿で十分か……】
 狼のボスは落ちていく狼を見下ろす。
【お前たちはもうナーストレンドには送らない。ここで消滅してもらう】
【消滅……そうか…おぬしはフォルセティの孫であり、対狼一族専属特殊兵器……話には聞いておったが……アースガルズでの禁術も許されておるのじゃな……】
 ボスは動じることもなく、そこに佇み落ちていく狼たちを見ている。そしてボス以外の全ての狼は、氷で動きを封じられ海の底へと沈んでいった。