~双晶麗月~ 【その5】完
そこに浮かんでいたものは、真っ白な花のような服をひらひらと揺らし、大きな白い羽根の翼の腕を広げている。翼の中央にあるその顔は、私と同じような顔をしている。そして血のような真っ赤な瞳。足元まで伸びる栗色の髪が揺れる。
「あっ!あれは…!」
そう、そこにはあの海底で見た[白い悪魔]の姿があった。
「なんで!さっき私の体にいたんじゃないのか?」
「オレにもわかんねぇ。アイツに聞いてみろよ。今お取り込み中だけどな」
白い悪魔の姿になったラシャから十数メートル離れた所には、黒い羽根の翼を広げたミシェルがいた。
「ミシェ……!」
そして、その反対側にはあの巨大狼が……5体!
「ちょ……!…あれ!どうすんだよ!ミシェル助けないと!」
「どう助けろってんだよ。オレたちには何もできねぇだろ!」
そう言って雄吾は私の腕を引っ張り、木の陰に隠れた。
隠れた場所からすぐに目に入ったのは、荒く波打つ海岸に倒れる巨大狼が数体…
アイツら…何体で来てるんだ……!
その時だった。
暴風が吹き荒れ、木々が大きく揺れる。私は長い髪が邪魔になり押さえる。雄吾は痛む体を無理に起こし、私に風が当たらないように囲ってくれた。
その風が収まった後すぐに、私たちは上空を見上げた。よく見ると、ミシェルが術を施したのか、[白い悪魔]は動きを止めている。そして先ほどまでまとまっていた反対側の狼たちのうち2体は、ミシェルの風に飛ばされたのか、遠く離れた所で態勢を整えるところだった。
【因縁とはこのことかのぅ…フハハ…】
しゃがれた声が脳裏に響く。あの狼のうちの1体だろう。恐らく一番大きな気配を持つ狼の……
作品名:~双晶麗月~ 【その5】完 作家名:野琴 海生奈