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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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 辺りを見回すとそこは、見覚えのない場所だった。たくさんの木に囲まれた砂地で、木々の隙間の先は、大きく波打つ海だった。
「ここは……?」
「ここ…お前来たことないのか?宇美塚高校のもっと東にある…白崎ヶ浜だよ。[兄貴]が…なんか、わけわかんねぇことしたら、一瞬でここに…来てたわ」

 苦しそうに雄吾は言う。
 その雄吾が言う『わけわかんねぇこと』って、以前巨大狼を消してから私の家に移動する時に使った術だ………多分あの風の……

 そして、痛々しい姿のまま、雄吾は私に微笑んだ。
「やっと帰ってきたのか。おせぇぞ」
「ばかやろ…!おまえこそなんて格好してんだよ…!」
「ハハッ…カッコイイだろ?ちょっとはホレたか?」
 雄吾は体を見せようと、弱々しく両腕を伸ばす。
 私はまともに見れなかった。
「……自惚れんな…そんなヨレヨレになってるやつにホレるかよ…!」
「アハハハ!ほんっとオマエは?。女らしくしろっつってんだろ?」
「うるせぇよ……そんなこと言うなら顔洗って出直してから言えっつーの」
「顔洗っちまったらよォ、この雄姿が消えちまうだろ?」
「そんなの雄姿って言わねぇよ」
 そう言って私は雄吾の方を見た。

 雄吾の体が……傷だらけだ……こんな………

「狼一族が私の元に現れた時点で、周りの人たちをこんな風に巻き込んでしまわないように誰にも話さないようにしていた。雄吾はなおさらカンがいい方だから、もっと警戒しておけばよかったんだ。そうすればきっとこんな風に……」
「ばかやろう!これはオレが望んだことだ!」
「………ごめん…雄吾」
「イチイチ謝んな!」
 私は必死に涙を堪え、平静を装い雄吾に聞いた。
「……で、なんでそんな姿なんだよ」
「あれ…見ろよ」
 力もなくそう言った雄吾が目で指した上空を、私は見上げた。