~双晶麗月~ 【その5】完
【さぁ、それを使って下さい!】
そう言われて恐る恐る手元を見てみた。
にわかに抑えられた光に包まれた剣。白く輝く剣。柄の部分にはダイヤモンドのような宝石が散りばめられている。どちらかと言うと短剣というカンジの短めの剣は、私の手にしっくりと収まっていた。
【それであなたを繋いでいる鎖が切れるはずです!】
【わかった!やってみるよ!】
……と、その時ふと気が付いた。
【って、ミシェ……前みたいにはここへ来れないのか……?】
【すみません……今は………とにかく早く表層へ出てきて下さい!そして、表層へ出たらすぐに結界を張って下さい!】
【う…うん、わかった!】
ミシェルの様子がおかしいと思ったが、すぐに逢いたくて急いで鎖を剣で切り裂いた。
それはとてもキレがよく、まるで糸を切るかのようにたやすく鎖を切ることができた。
切り離された鎖は泡の渦となり、重ねられた岩場に大きな隙間を作る。
私はそれらの泡が消えてなくなる前に、岩場の隙間を潜り抜け海の上へと泳いだ。
海面から顔を出す瞬間、潮の香りがした。
だがそこは海の上ではなく、雄吾の腕の中だった。それも血だらけの雄吾の腕の中。
「雄吾!どうしたんだよ!何があったんだ!」
驚いた私はすぐに起き上がり、座り込んだままの雄吾を見た。
雄吾は頬の辺りを血に染め、首筋から胸、腕にかけて大きな傷をつけている。もちろんそこからも大量の血が流れる。そして血が流れ落ちたのは、砂の地面。
私は傷一つなかった。
作品名:~双晶麗月~ 【その5】完 作家名:野琴 海生奈