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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その5】完

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【ミシェル…アナタはニズホッグの血が流れているのよ…アナタは穢れた血を持って生きているの…ワタシたちと同じ、狼一族と同じなのよ…さぁ…一緒に向かいましょう…世界の終焉(しゅうえん)をこの目で見届けましょう……】

【違う!ラシャ!君はアース神族だ!そして僕もだ!ラグナロクはもう二度と起こしてはならないんだ!目を覚ませ!ラシャ!】
【本当はニズホッグの血が騒ぐでしょう…?何かを傷つけ、喰らい、血が流れる…それを見てアナタは幸せに満ちる……】
【ニズホッグは……狼一族とは違う!そんなことをして喜びはしない!】
【ナーストレンドでニズホッグは何をするの…?血をすするでしょう…?そしてそれを合図に狼たちは死者を喰らうのよ?】
【違う!それは歴史と共に捻じ曲げられた作り話だ!】
【同じ第三層に棲むもの……同じ意思を持ち、同じ世界を作り出す……】
【君は……もう全てを狼一族に捧げてしまったのか…?】
【ワタシはカレらに選ばれたの……】
【違う!思い出せラシャ!君は世界樹からヘルヘイムへ落ちた、そして狼一族に捕らえられた…君がアースガルズに戻らなければ、アース神族は老いて朽ち果て滅びてしまう!】

「あのさ!ごちゃごちゃ言ってねぇでなんとかしろって!」
 痺れを切らした雄吾が口を挟む。
「それよりラシャ!お前はもう元に戻る気はないのか?オレは、あんたのために生きてる咲夜を、どうしても助けたいんだ!あんたの分身体だか何だか知んねぇけどよォ、咲夜は咲夜として現に今こうして生きてきてるんだよ!あんたらの事情で消されてたまるかってんだよ!」

【咲夜……ワタシの分身体…可愛そうな子……】
「可愛そうなのはお前だよ!何百年もの間ずっと幽閉されてきたんだろ?ずっと孤独に……ずっと待ってたんだろ…?」
【ワタシが…可愛そう…?】
「あぁそうだ!咲夜とおんなじようなツラしてるくせに幸せ感じたことないような目ェして……本当に根っから腐っちまったのかよ!」
【ワタシは…待ってた……ずっとあの冷たい水の中で…ミシェル…アナタを……】

 そこに再びあのしゃがれた声が響く。
【ラシャ!おぬしは我らの王妃となるのじゃ!そのまま術を使いあやつを消してしまえ!】
 その声と同時にラシャの目が赤く光る。そして体全体から黒い光を放ち始めた。だがその間を縫うように、白い光も放たれる。