~双晶麗月~ 【その5】完
【咲夜!心を許してはだめです!しっかりして!】
ミシェルの声が聞こえる。
【今意思を持たなければあなたは本当に消滅してしまいますよ!しっかり!】
消滅…だれが…?
耳を澄ますと、羽ばたく音と荒れ狂う波の音。
今何が起きているんだ…?
私は遠のきそうな意識のまま、周りの状況を把握しようとしていた。
「おい![兄さん]よ!なんなんだよあれは!」
雄吾の声がする。
【ラシャが完全開放してしまっています。でもフィルグスの封印をつけたままの状態で…】
「それって何とかなんねぇのかよ!」
【今のままでは狼一族の念がラシャを動かしている状態なので、今のラシャはどう動くかわかりません】
「わからねぇじゃなんともなんねぇだろ!何か方法あるんじゃねぇのかよ!」
【あるにはありますが……】
「ならそれやるしかねぇだろ!」
【えぇ……そうですね】
ミシェルは言葉を詰まらす。
ラシャが完全開放……?
それって私が消滅するってことじゃない?
そっか…私……ラシャにかけられたミシェルの結界解いちゃったんだ……
だからだ…もう私は………
そこへしゃがれた声が響き渡る。
【われらを全て消した所で、われらには何の問題もないわ…王妃の魂はわれらの手の中…これで再びラグナロクが訪れるのじゃ…ふはははは!】
ラグナロク……?
世界終末…また訪れる…って……?
「くっそぅ…!ラシャは完全に乗っ取られちまってんのかよ!出し惜しみしねぇで術でもなんでも出せよ!このままじゃ咲夜が消滅しちまう!」
雄吾がそう言うと、[白い悪魔]はゆっくりと口を開いた。
体の自由を奪われた私は、ニズの背中で雄吾に抱きかかえられていた。遠のきそうな意識が微かに残る中、荒く波打つ海の上に浮かぶ白い悪魔と、黒い翼のニズホッグになったミシェルの会話に耳を傾ける。
作品名:~双晶麗月~ 【その5】完 作家名:野琴 海生奈