Haus des Teufels
§ 魔術師 §
魔術の起源は知らないが……。
最初の魔法書の著者は、古代エジプトのトートと言われている。
文字を作り、神々の書記官だった彼だ、それくらいの役得があっても許されただろう。
宇宙の秘密を42巻の書物にまとめ、女神イシスに多くの呪文を授けた。
最高神 ラーでさえ、その魔力に感服した。
神が人間以上の力を持っているのは、その魔法の力を使うことが出来たからだ。
だが、時として……人間が、その力を得ることがあった。
神さえも使役する人間を、人々は“魔術師”と呼んだ。
真子に、携帯のアドレスと番号を教えた。
正直に言うと、私が手間取って彼女が全てを設定したのだが……。
今時の魔術師は、携帯の扱いにも慣れているらしい。
彼女は黒猫と遊んだ後、表情を明るくして帰って行った。
意外だったのはベンツの運転手だった。
ワンレングス ショートボブに、レイバンのサングラスを掛けた若い女性だ。
見覚えはあったが、思い出せなかった。
少女に携帯の操作を習うより悔しかった。
作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月