小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Haus des Teufels

INDEX|25ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

§ “神”に触れた者 §
  
 
「分りました。でも、なぜ私に?」
 
「真子の恩人だからじゃ」

「助けられた記憶はありますが、助けた覚えはありません」

「君は、真子の魔法を止めたじゃろう?」

 厨房でのクロコとの闘いを思い出した。
 
「知らないようじゃが……トランス状態になった真子を止められる者はおらん」
 老人は悲しそうに言った。
「たとえ神でも不可能なのじゃ」

「私は人間です。それに、肩を叩いただけです」

「“神”に触れた者は……たぶん、君が初めてじゃろう」

 頭が混乱しているのが、自分でも分った。
 今なら、赤いチョッキを着た白ウサギにでも付いて行くだろう。


 長い沈黙の後、老人の明るい声が聞こえた。
 湿った雰囲気は苦手だったようだ。

「それに、我が家の招待を断ったのは君が初めてでのう」
 歳をとっても、眼光は衰えていなかった。
「少々興味をもって、調べさせてもらったよ」

 年寄り、しかも金持。
 私のスリーサイズさえ知っていそうだ。

「三年前に隣町に来たようじゃが、それ以前の八年間ほどの記録が全く無い」
 お預けを食らった犬のように、再び悲しい表情をした。
「その前は、歴史学者だったようじゃが……犯罪者にでもなったのかね?」
 
「フランス外人部隊に入隊していました」
 
「なぜ、そんなところに?」

「ヴァカンスですよ」

 私も、暗い雰囲気は苦手だった。
 
 

作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月