Haus des Teufels
§ カウントダウン §
「榎さん、ドアのガラスを割って鍵を開けられる?」
拓人が珍しく過激な発言をした。
榎の拳と筋肉なら防弾ガラスでも打ち砕くだろう。
「それしか無いね。少し離れて下さい」
榎が両手を組んだ。
腰を安定させ、全体重を乗せて肘でガラスを突いた。
銀行の金庫でも開けられそうな勢いだ。
だが、鈍い音が響いただけで壊せなかった。
何度も繰り返し試したが無駄だった。
最後には体当たりまでしたが、ドアも開かなかった。
額から、汗が流れ落ちていた。
「麗子、そのピアスは本物のダイヤ?」
私は彼女の耳の大粒の石を見つめた。
「あたしがイミテーションを着けると思う?」
察したかのように耳からピアスを抜き取った。
一番大きいガラスにダイヤを押し付け、力いっぱい擦り下ろした。
やはり、傷一つ残っていなかった。
特殊なガラスでもドアでもない。
ただの、魔力だ。
「拓人、ここの日没時間を調べてくれ」
私が言うと同時に、拓人はPDA(携帯情報端末)を取り出した。
彼は1秒間にキーを15文字打てる。
PDAでも、そこら辺の女子高生よりは速いだろう。
「あと、約10分」
彼が不安そうに私を見つめた。
総攻撃のカウントダウンが、始まっていた。
作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月