Haus des Teufels
§ やって来た §
あれだけの魔力、身内以外からでは考えられなかった。
それも、一子相伝に近い形だ。
だが、その師匠が使えないとは……。
「確かに、誰でも使えるものでは無いね」
澄んだ目で見られるのが、苦手だった。
「だけど、真子ちゃんの手に負えなくなった時は?」
“暴走した場合は?”とは、聞けなかった。
彼女の魔法は、周囲の空間さえ変えるほど強力だ。
少し間違えただけで、どんな影響が及ぶのかも分らない。
「その時は……」
真子は再びうつむいた。
10歳の彼女にも、一つの決心が有るようだ。
私と椿は、二人で彼女の手を握り、また歩き出した。
人間の能力を超越した“神秘の力”がある。
それは、探し出したり招きよせたりは出来ない。
もし得られたとしても、薄っぺらなものでしかなかった。
だが、真子の場合……
彼女の求めなしに、それは“やって来た”ようだ。
アフリカ某国、某王家の門外不出の魔法書。
写すのに、一ヶ月近く掛かった書物。
信頼を得るまでには、三ヶ月ほど掛かったが……。
最後の文を思い出した。
“欲望を捨てれば、全てを得る”
純粋な心と目の持ち主以外、それは無理だろう。
作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月