Haus des Teufels
§ 似たもの同士 §
敷地の中、うねうねと続く小道の脇を、小川が静かに流れていた。
ところどころに沼があり、一面、まだ幼い蓮でいっぱいだった。
花開く前の小休憩。
眠りにおいてすら、それらは美しかった。
純白で清廉な蓮の花は、もっとも不潔で濁った泥沼の中から咲くそうだ。
暗くなるには、まだ時間があった。
各自、気の向くままに邸内を散策していた。
先生の組には、柊・楸・由香里、そして麗子。
一番華やか雰囲気に包まれていた
拓人と榎は、趣味が同じとかで話が盛り上がっていた。
私と真子、そして椿は……なぜか一緒に歩いていた。
類は友を呼ぶ、上手い表現だ。
似たもの同士が自然に集まった。
自分を知りたければ、周りの人間を見渡せば分るのかもしれない。
「真子ちゃんは、誰から魔法を?」
一番気になっていた事を訊ねた。
「おじいさまから……」
やはり、うつむきながら答えた。
「おじいさまは、クロコに術をかけなかったの?」
「おじいさまは……魔法を使えません」
立ち止まり、悲しそうな目で私を見た。
「私の目、キモ……気持ち悪いでしょう?」
オッドアイの虹彩が、以前と違う色に変化していた。
「私が魔法を使えるのは……この右目のセイなの……」
右目の“オカゲ”ではなく“セイ”だった。
椿が真子の肩に、そっと手を置いた。
作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月