Haus des Teufels
§ 三人だけ §
双方の紹介が終った後、おのおの適当な席に着いて歓談を始めた。
だが、肝心な伊集院家の人間がいないことに気付いた。
「こちらの家の方は?」
私は椿に訊ねた。
「ひょっとして、真子ちゃんが当主かな?」
「申し訳ございません。あいにく当家の主人は外出中です」
椿は、少し顔を曇らせて言った。
「真子さまのお母上は、ご気分が優れないようで、休まれております」
先生が付け加えた。
「ご両人とも、よろしくお願いしますとお伝えするように申しておりました」
「真子さまから聞いたのですが、クロコを捕まえたそうですね」
柊と名乗った少年が言った。
「僕は一度も無いのですよ。触れたことも無い」
「手間取ったけど、捕まえたよ」
由香里が、チラッと私を見て言った。
「すごいな……どうやって? 網か何かを使ってですか?」
彼は興味津々のようだった。
「素手で、ですよー」
四衛士の視線が、由香里に集まっていた。
「素手で捕まえるとは、かなりの腕か術の持ち主ですね」
楸という黒髪の青年が言った。
「この家でもクロコに触れたのは、真子さまと先生、そして榊(さかき)だけです」
「その榊は今、御主人のお供に……」
榎が苦笑しながら言った。
「ちょっと変わったヤツで、四衛士ではないのですが……ま~会ったらすぐ分ります」
柊も楸も、つられたように笑っていた。
「そうだ、柊。 由香里さんに手合わせをお願いしたら?」
椿が突然言った。
「私達の中で、一番クロコに触りたがっていたでしょう」
「僕は構わないけど……」
柊が上目遣いで由香里を見た。
彼が女なら、断れる男がいなかっただろう。
「OK!」
ミニワンピース姿の由香里が立ち上がった。
「動きやすい格好で良かったわー」
たぶん……彼女に勝てる男は、いないだろう。
作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月