Haus des Teufels
§ 歌 §
“神話のワルキューレは、白鳥の羽衣を身にまとい、天馬に騎乗してやって来た。
現代のワルキューレは、ボディアーマーを身に付け、ティーガー(攻撃ヘリ)に乗ってやって来る。”
Caméliaが華々しい初陣を飾った時、作られた歌を思い出した。
「では、手に入れたのですね?」
彼女は、イタズラ娘のように笑った。
何度も一緒に死線を越えた仲だ、私の入隊の動機も知っていた。
「おめでとうございます」
「写すのに一ヶ月近く掛かったけどね」
私は、ささやくように言った。
周りの目が気になったが、旧友との再会の喜びが、それを上回った。
「君は、ここで何を? 髪を伸ばすため?」
「いいえ。私も除隊した後、縁あって、こちらでお世話になっております」
彼女は、はにかんで言った。
「今は、伊集院家 四衛士 筆頭“椿(つばき)”と申します」
椿の後ろに控えていた3人の男達が頭を下げた。
一癖も二癖も有りそうな連中だったが、上手く飼いならしたようだ。
実戦経験で彼女に勝る人間は、恐らくいないだろう。
「私から紹介しても、よろしいですか?」
椿が銀髪のイケメンに許可を求めた。
彼は、私達の会話を聞いて少し驚いていたようだが、快く承諾した。
三人の中で最も若く見えたのは“柊(ひいらぎ)”。
少女のような面立ちで、まだ十代のように見えた。
二番目は“楸(ひさぎ)”と言った。
長い黒髪を後ろで一つにまとめていた。
端整な顔立ちで切れ長の目が涼しく光っていた。
三番目は“榎(えのき)”
大柄筋肉質で、腕の太さがスーツを着ていても隠せなかった。
笑うと、小動物のように可愛かった。
彼女は最後に、銀髪のイケメンを紹介した。
「そして、私達の先生です」
名を明かさなかった。
大勢の強いヤツを見てきたが、どの雰囲気とも違っていた。
だが……少しの躊躇いもなく、椿に“先生”と言わせる人物だった。
そのうち、彼の歌が出来るかもしれない。
作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月