Haus des Teufels
§ Camélia §
玄関の車寄せには、見覚えのある二人がいた。
一人は真子で、真紅のロングワンピースを着ていた。
満面に笑みを浮かべ小さく手を振っていた。
もう一人は、あの銀髪のイケメンだった。
「ワァ~色男!」
「おぉマジカッケー!」
麗子と拓人は彼と初対面だが、意見は一致したようだ。
「ようこそ、おいで下さいました」
車のドアを開けながら、イケメンが笑顔を見せた。
“百万ドルの笑顔”は、女・子供にしか使えない言葉だと思っていたが……
間違いだと気付いた。
中に入ると、バスケのコートなら二面くらい取れる広間があった。
イタリア産の白大理石の床に、ステンド硝子の光が揺れていた。
装飾品は全て金色に統一され、ドアの蝶番にも手抜きは無かった。
「客間に、ご案内致します」
口を開けたまま立ち止まっていた拓人にも、イケメンは優しかった。
客間には、四人が待っていた。
その中の一人が、私を見ると突然走り寄って来た。
真子の運転手の女性だった。
「Majeur!」
足を揃え背筋を伸ばし、手のひらを表に見せる、フランス式の敬礼だった。
「Camélia?」
まさかと思ったが、声を掛けてみた。
彼女は姿勢を正し、目を輝かせた。
「Pour vous revoir, un grand honneur」
「(再びお会い出来て、とても光栄であります)」
彼女は……
フランス外人部隊で最初の、そして最後の女性だった。
しかも、所属は第2外人空挺連隊のGCP(空挺コマンド小隊)である。
作品名:Haus des Teufels 作家名:中村 美月