「セックスアンドザシックスティーズ」 第十一話
バスルームに向かう恵子の後姿に高志は昔のことを思い出していた。もう何年前になるだろう。
仕事先で知り合った女性と一度だけホテルに来たことがあった。その彼女の印象と恵子は年齢は違うが良く似ていた。
ホテルのエレベーター前で恵子の顔を見たときハッとした自分に動揺した。まさか・・・しかし他人だという事がすぐにわかった。
声を掛けたのもその安心からと、興味を惹かれたことの気持ちからだった。
一度限りの恋だったが高志には強い想い出となって心に焼き付いていた。妻との関係がだんだん離れてゆくようになったきっかけだったかも知れない。
それほどにそのときの女性は魅力的で高志を夢中にさせた。しかし、一夜限りだったのだ。別れてから連絡が取れなくなってしまった。
諦めがつかずにしばらくは探したが名前も住んでいるところもどうやらウソだったのだ。だから今夜恵子に出会ったときにドキッとなったのだ。
作品名:「セックスアンドザシックスティーズ」 第十一話 作家名:てっしゅう