有明バッティングセンター【前編】
「ドンドンドンドン、ドンドンドンドン」
8時を5分程回った頃、玄関のドアを激しく叩く音が聞こえた。マスコミの取材
やら、やじ馬のいたずらやらで、朝から晩までインターホンが鳴り続けるため、
電源を切っていたのである。
(おっ、来たな。)
急いで応対に出た。ドアのロックを解除し、ドアを開けると、
「バシャ、バシャ、バシャ・・・・」
「有明さーん。有明さーん。今の心境を一言お願いしまーす。」
「キャー、キャー、キャー!」
「押さないでください。押すな、押すな!」
もの凄い数のフラッシュと怒涛のような喧騒が俺の視力と聴力を一瞬奪った。
大量のフラッシュを背負い、ドアの前に立つ人物はシルエットとなってしまい、
よく見えなかった。突然、手を引っ張られ、グイっと前に引きずり出された。
「ちょ、ちょっと待って、カギ、カギ!」
俺は、急いでドアのカギを閉めると、また手を引かれて小走りに待機していた
ワンボックスカーに強引に押し込まれた。
作品名:有明バッティングセンター【前編】 作家名:ohmysky