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有明バッティングセンター【前編】

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恭子に借りた借金の返済を延ばしてもらう代わりにエース、安藤健太の独占取材を
敢行させるため、俺が仕組んだものだった。ついでに、このセンターの宣伝もやっ
てもらおうと、センターでの普段の健太の練習風景を見せることも企画していた。

健太が、「いつもこのセンターで練習しています。」

などと言おうものなら、健太目当てのファンが殺到し、俺が作った彼のサイン入り
ブロマイドも飛ぶ様に売れる事だろう。

(このコンパに使った費用、きっちり取り返させてもらうぜ。)

「かんぱーい!」

コーラの入った紙コップを皆で高々と上げて、祝宴は始まった。
ただし、俺の紙コップには焼酎の麦茶割りが入っていたが・・・。
4リットルのペットボトルに俺用のスペシャルドリンクを仕込んでいた。
仕出し屋に頼んだオードブルの唐揚げをつまみにグイッと一杯呑み干すと、今まで
禁酒していたせいか、アルコールが細胞の一つ一つまで浸透していくのが実感できた。

(こんなにうまい酒を呑んだのは何年ぶりだろうか・・・・)

一人、至福なひと時を味わい、スティービーワンダーの様に体をゆっくり左右に
揺らしながら、大騒ぎする野球部の面々をご満悦な表情で眺めていた。

「一人だけ楽しもうったって、そうは行きませんよ。」

見ると安田がうれしそうに紙コップを差し出していた。

「や、安田さん! どうしたんですか?こんな所で。」

「いやあ、恭子ちゃんが特番やるって聞いていたから、様子見に来たんですよ。
気になる選手もいるしね。」

気になる選手って・・・健太の事か? いや、健太は進学志望だから・・・
浩二か? 浩二は阪神志望だから安っさんくどこうったって無理だぜ。

「なぁ、一郎くん。」

安田がうれしそうにはしゃぐ野球部の面々を遠い目で見つめながらつぶやいた。

「はい?」

「プロの道に入らんかね。」

「はぁ?」

このおやじ、もう酔っ払いやがった。

「安田さんが、ドラフトで指名してくれたら入りますよ。」

こういう時は適当にあしらっておくに限る。
俺のスペシャルドリンクをしこたま呑んだ安田は、「うんうん」とつぶやき
ながら千鳥足で去っていった。