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有明バッティングセンター【前編】

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「浩二、ちょっと来い。」

ネクストバッターズサークルで、力任せにバットを振り回している浩二を呼んだ。

「いいか、長打を狙って振り回すな。フルカウントまで絶対に我慢して、最後の
決め球を狙え。あいつはコントロールには絶対の自信を持っているが、お前の
長打も恐れている。あいつの決め球は内角低めのカーブだ。その球を長打にする
ことは難しい。次の健太に任せてお前はなんとしても塁に出る必要がある。
いいな?それで打ち方だが、あいつの手元を見るな。セットに入って、投球まで
の間に一度モーションが止まる。そこにあわせてお前は自分の右足を上げろ。
それからあいつの足元にたたきつけるようにバットを振り下ろすんだ。」

浩二はじっと俺の言うことを聞いていたが、不満そうにこう言った。

「スカッとホームランでも打ち込んでやりたいっすけど、いまの俺じゃあそんな
力ないっすよね、どうせ。ここはコーチの言うことを聞いて後は健太に任せるっす。」

「よーし、野球はチームプレーだ。負けちまったら何にもならねえし、女の子に
もモテねえぞ! ほら、マネージャーの菜摘ちゃんも両手を組んで祈るようにお前
を見つめているぜ。」

笑いながら、浩二のデカイ尻を思いっきり引っぱたいてやった。

「なにするんすか、いってーなーもー!」

ずっと好意を寄せていたマネージャーの菜摘の事を突然引き合いに出された照れ
くささも手伝って、幾分緊張がほぐれた様子の浩二はヘルメットを右手で抑えな
がらバッターボックスへと向かった。

ふと、ベンチを見ると、俺と浩二のやり取りをずっと見ていた健太の顔つきがまた
戦闘モードに入っているのが見える。