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有明バッティングセンター【前編】

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西大1校野球部のバッティングコーチに就任し、1ヶ月が経過していた。
明日から夏の高校野球、開会式出場のため、遠征に出発する。
決勝まで順調に進めばこれから15日間、センターを休業し、コーチとして同行
する事になる。学校主催の壮行会が終わり、部室にて野球部の面々と最後の儀式、
「気合入れ」を行う。監督の西脇が壇上に立った。

「お前ら、3年生は最後の晴れ舞台や、悔いの無いようにやれ。レギュラーの2
年生は3年生の晴れ舞台に華を添えてやらなあかんでぇ! 俺は、情け容赦の無い
男や、結果の出せん奴は代える。他のメンバーもそのつもりで準備せぇ。
ほな行くでぇー! 気合やぁー!」

「おーー!」

総勢63名、それぞれの思いを胸に拳を突き上げた。

我が西大1高は俺が何の指示も出さずともそれぞれの勝負を無難にこなし、とうと
う決勝まで勝ち上がった。最後の対戦相手は優勝常連校で宿敵のGL学園である。
毎年、スター選手を排出し、プロ転向後も華々しい活躍をしている。
今回も、目当ての選手を視察するために、たくさんのスカウトマンが集結している
のが垣間見える。GL学園のエース、保坂直樹だ。

彼は高校野球では珍しいアンダースローの投手で、切れのあるカーブ、シュート
を投げ分ける変化球投手である。アイドル歌手の様な端正な容姿はマスコミ、
女性ファンを釘付けにし、そのスター性と今期たたき出した高校野球最多脱三振
記録大幅更新にスカウトマンが群がっていた。

「あいつ、調子に乗ってますね。絶対に打ち崩してやりましょうよコーチ!」

と浩二が鼻を膨らませながら詰め寄ってきた。

「当たり前だ!!」

珍しく、普段物静かな健太がはっきりと頷いた。

(おお、二人とも気合入ってるな!!)