【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら
「なぁ…」
中島が誰に呼び掛けるでもなく声を出した
「宝珠とか力とか時とか…さ…説明とかしてくれねぇわけ? したら…もしかしたら俺らでもできることあるかもしれねぇ…し」
中島が躊躇いがちに言うと迦楼羅がチラと乾闥婆をみる
「前に言ったことあると思うけど…宝珠がなければ僕らも君達と同じなんだよ…宝珠が力を具現化させているんだ」
矜羯羅が淡々と話しだした
「力っていうのは誰にでもあってね…その力って…何かってことはわかってるよね?」
「い…のちだよな…?」
坂田がつぶやくと矜羯羅が頷く
「命は誰にでもあります…生きていればそれこそ植物だって宝珠に選ばれたのなら力を使えるようになったり…」
「ああ…ヒマ子さんか」
迦楼羅の宝珠が鉢にあることによって動き話す夏の妖精の名を南が口に出した
「あなた達は生きるだけに使う命を僕らはその他に力として使うことができるのは宝珠に選ばれたからなんです」
乾闥婆が自分の胸についている宝珠を触って言う
「宝珠はもともと一つで…僕の宝珠も迦楼羅の宝珠ももとは一つだった…長く付き合えば宝珠も声を聞かせてくれるようにもなる…僕らが宝珠を使っているんじゃなくて宝珠に僕らが使われているんだ」
手のひらをくるっと返すと矜羯羅の指の間にあらわれた小さな玉を矜羯羅が指で弾くとフッと玉が消えた
「選ばれた僕らを崇めるやつもいれば疎ましく思うやつもいる…宝珠を我が物にして力を使おうとするやつもね…」
矜羯羅が目を伏せる
「でもね僕の宝珠をたとえばそうだね…若」
「…は?;」
ちらっと坂田の方をみた矜羯羅に自分を指差して坂田が俺? というカンジのジェスチャーをした
「坂田です先生;」
「どうでもいいよ…僕の宝珠を若がもつと…どうなると思う?」
坂田の言葉を右から左に受け流した矜羯羅が聞く
「力が使えるようになるんだろ?さっき言ってたじゃん」
中島が言うと矜羯羅の口元があがる
「死ぬよ」
一瞬音が消えた
作品名:【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら 作家名:島原あゆむ