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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら

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「ほら、これ貼っておけ」ぴらっと差し出されたのはピンクの絆創膏
「えぇ~これキティちゃんついてるじゃん」
「文句たれるな文句」
ペリリっと絆創膏の剥離紙をはがしながら操がしゃがむと京助が傷口に貼らせてたまるかというかんじで手をかざした
「抵抗するきかキサマ…京助の分際で」
「だってぜってぇキヨちゃんとかあじゅにからかわれるもん;」
近所のおガキ様の名前を上げて京助が口を尖らせる
「…ばいきんはいって腐っていいなら」
「やだ」
「なら貼っとけ;…はってやるから」
な? と操が言うとしぶしぶ京助が手をどけた
「よしえらいえらい」
笑いながら操が傷口に上手くスポンジ部分があたるように絆創膏を貼る
その様子を京助がおとなしく見ていた
ペリリっともう一枚剥離紙をはがし今度は反対の膝に
「操ちゃん…」
「なんだよ」
「…なんでもない」
京助が操の頭に顔をつけた
「きしょい。やめんかコラ;」
膝に絆創膏を張り終えた操が動けず文句を言うが京助はそのまま動こうとはせず
「おいこらきょ…」
「父さんも母さんも悠、ゆうばっかり…」
京助の身体に伸ばされかけていた操の手が止まった
「おれ…だっているのに」
頭の上から聞こえた微かに震えた声と鼻水をすする音
「操ちゃんも悠のところいっちゃうの…?」
びずっという音の後に問いかけてきた幼い従弟の言葉
「俺だっているのに…」
びずびずと今度は二回

わかってる

いるのに、ここにいるのにちゃんといるのに見てくれているのかっていう不安

俺だってわかってる

見ている見えている見てくれているふりをしているんじゃないかって思うくらいに不安なんだ

側にいるのに不安なんだ

撫でられていても不安なんだ

わかってる、知っているんだその感じ

嫌なくらいに

だからそんな思いはさせたくないんだコイツには

京助には…

この感じを知っているからわかっているから一番の解決方法も知っていて

難しいことは何も無くて

ただ精一杯の気持ちを込めて呼んでやるんだ

「京助」
名前を呼ぶと京助がズビッと大きく鼻水をすすった後顔を上げた
「お前はまだ危なっかしいからさ…どこもいかねぇでちゃぁんと待っててやるしまた転んだら困るからなお前の後ついてってやるよ」
きょとんとして話を聞いていた京助の顔が次第に歪んできてひっひっとしゃっくりが混ざってくると操が京助の鼻を摘んだ
「な く な。うっとおしい」
フガっと京助の鼻が鳴る
「泣いたらどっかいくからな」
操が言うと京助が慌てて両手で涙をぬぐった
「ない…てねぇもんッ;」
「…よろしい」
真っ赤な目で強がる京助に操が笑って頭を撫でた