【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら
という音と軽い震動そしてばたばたという廊下を走る足音が部屋の前を通過する
「…落ちた…んかの」
ゴロゴロという音が尾を引いて遠くに聞こえる
阿修羅がゆっくり目を閉じた
勢いよく茶の間の戸が開いたかと思うと飛び込んできた悠助が一番近くにいた中島に抱きついた
「うぉ!; どうした悠;」
悠助を抱きとめながらも中島が驚く
「かみなりー;」
「ああ…今の雷か」
へしょげた顔で言う悠助に坂田が窓の方を見て言う
「落ちたよな絶対どっかにさ」
南が立ち上がり窓を見てそして固まった
一向に動こうとしない南を見て慧光が立ち上がる
「何みて…」
窓の外を見た慧光までも南と同様に動かなくなった
慧光の顔がゆがむ
そして
「コロ助!?;」
「慧光!!」
南の身体を跳ね除けて窓を開けた慧光が外に飛び出した
そこだけが光っているように見えた白い布をまとったその人物がたっているその回りだけがぼんやりと光っているように
「…久しぶり」
ぱしゃっと水溜まりを踏んでその人物の前に慧光が立っていた
「慧喜を返すナリ」
ざぁざあ降り続く雨に慧光の髪と服が濡らされていく
「誰だ…? あれ…」
南が見るその方向を矜羯羅と迦楼羅が見るなり二人同時に南を突き飛ばし窓から出ようとして詰まった
「どかんか!! たわけっ!!」
「それは僕のセリフだよ」
ギャーギャー怒鳴る迦楼羅に対し冷ややかに矜羯羅が返す
「…ぁまぁ」
矜羯羅の肩をポンポン叩き迦楼羅の頭もポンポン叩いて制多迦が二人を宥める
「一体アイツなん…」
突き飛ばされた南が柴田に支えられながら起き上がると一瞬の光
「慧光!!」
矜羯羅が光に向かって叫んだ
作品名:【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら 作家名:島原あゆむ