【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら
握られた手から想いと一緒に流れ込んでくるこの体のもうひとつの記憶
操の記憶
緊那羅が知らないまだこの体が操として京助と一緒にすごした時の記憶
今より幼い京助
今より泣き虫な京助
今より…
思い出した、という表現はおかしいのかもしれない
でも…
なんでだろう懐かしいと感じるのは
この体が操のものだったから?
京助は今操と緊那羅どっちが必要なんだろう?
『信じて…』
頭の中に聞こえたのは少女の声
『呼ばれたでしょう?』
ハッとして思い出す
呼ばれた名前
ゆっくりと握られていた手が放された
『ね…? 彼が必要としているのは…
『聞きてぇんだ【緊那羅】の歌』
私で
操じゃなくて緊那羅でいいと言ってくれたこと
嬉しかった
いつも先を歩くのにちゃんと待っててくれたり
文句をいいながらも結局は手伝ってくれたり
私だけに見せてくれた涙とか笑顔とか
それを全部守りたい、守らせてほしい
嫌だって言ってもこれだけはやめないから
これだけは
作品名:【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら 作家名:島原あゆむ