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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら

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しかれた布団のまわりだけが即席で片付けられた京助の部屋には緊那羅と悠助と母ハルミ、そして制多迦
しかれた布団に寝かされた京助は寝返りもせずいびきもかかずにただ微かに息をしているだけだった
「…緊ちゃん」
母ハルミが緊那羅を呼ぶと緊那羅の肩がぴくっと動いて眉を下げた緊那羅が顔をあげる
「はい…」
ワンテンポ遅れて緊那羅が返事をした
「…7年前はありがとう」
「え…」
「何故かねいきなり思い出したの7年前のこと…きっと竜之助が何かしてたのね、まったく…」
ふぅっと鼻から息を出して母ハルミが緊那羅に笑顔を向けた
「あ…のでも私…」
「操…なんでしょう? あなたの体」
緊那羅が俯く
「…めんなさいハルミママ…緊那羅は悪くなくて悪いのは」
「あらなぁに? 怒っているわけじゃないのよ私」
母ハルミが制多迦ににっこりと笑顔を向けて言った
「竜之助と一緒になるってことはいつこんなことが起きてもおかしくないってわかってたのよ私」
母ハルミが京助の頭を撫でた
「…本当は7年前にこうなっていたのよね…」
緊那羅が握っていた手をさらにきつく握り締める
「それが7年…7年くれたのは操だったって…だけど操はもういないでしょう? だからかわりに緊ちゃんに言ったのよ、でも…操じゃないのよねごめんなさい混乱しちゃうわよね」
母ハルミの眉毛が下がった
「京助…」
悠助が京助の顔を覗き込む
「眠ってるの? まだ八時なのに具合悪いの?」
京助に守られ眠っていた何も知らない悠助が京助の鼻を摘んだ
「悠助…」
そんな悠助を見て緊那羅が目をこすった
ぽふっ
緊那羅の頭の上に置かれた制多迦の手がポンポンと緊那羅の頭を叩く
「…ったよね僕…君は信じないといけないよ京助を何があってもね」
にっこり笑って制多迦が言うと目を押さえたまま緊那羅が何度もうなずいた
「さぁ!! …ご飯にしましょうか」
パンっと母ハルミが手を叩いて立ち上がる
「…京助が起きておなかが減ったって騒いだら大変だものね。悠ちゃん手伝ってくれる?」
「はぁい」
悠助が元気よく返事して立ち上がると京助の部屋の戸をあけた
「緊ちゃん、タカちゃん京助…おねがいね」
そういい残して母ハルミが戸を閉める
コチコチとあまり活躍していないであろう目覚まし時計の秒針の音が大きく聞こえるがどれだけ時間が過ぎたのかはわからなかった

震える手を伸ばして緊那羅が京助の額の髪をかきあげる
「…あったかいっちゃ…京助…」
「…ん」
今度はその手で頬に触れる
「…今日はよだれたらしてないっちゃ」
「…ん」
だんだんと緊那羅の声が震えてくるとそれまで相槌でうんうん言っていただけの制多迦が緊那羅を抱き寄せた
「…うすけが前に言ってた泣き止むまでこうやってるといいって」
緊那羅の頭に自分の頭をつけて制多迦が緊那羅の頭を撫でる
「…ょうすけのかわりに僕が今は付き合うからだから…泣き止んだら信じようね」
「っ…ひっ」
しゃっくりのような声ひとつ
そしてその後に小さく嗚咽が続いた緊那羅の頭を制多迦がゆっくり何度も優しく撫でた
外の雨はまだ当分止みそうにもなくざぁざぁと降り続いていた