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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら

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「おっせぇな…」
操が遠くから聞こえたチャルメラの音で顔を上げた
ビニールプールで冷やされていたスイカはさっくりと切り分けられてしまったらしく、その二切れが皿に置かれていた
ほんのりオレンジ色に染まりだした和室の襖から背を離し操が立ち上がって縁側から外を覗く

パー…プー…

チャルメラの音がさっきよりちょっと大きく聞こえる
庭をぐるり見渡すとスイカを冷やしていたビニールプールが物干し竿にかけられ水がぽたぽたとたれていた
足を進めて縁側のギリギリ縁まで来るとまた庭を見渡す
家のすぐ側の壁には京助が宿題で育てている朝顔が蕾をつけていてそのすぐ側には京助が気に入っている緑色のジョウロが置かれていた
草の垣根の向こうに見える社務所の窓に母ハルミの姿が見える
背伸びをして石段の方も見ようとしたがよく見えず昼間脱ぎ捨てておいたサンダルを履いた操が庭に下りた
ちょっとだけ水平線に足をつけた夕日が海面に反射してそこらじゅうをオレンジに染めている
石段の下を見ても誰もいない
境内の方を見てもただ赤い鳥居が立っているだけで人影は見当たらなかった
「…っとに…愛の鐘なったら帰って来いっていってんじゃんか」
児童生徒の帰宅時間の目安としている愛の鐘がなったのはもうかれこれ1時間前

パー…プー…

チャルメラの音がすぐ側で聞こえそして遠のいていく
「…あーもー!!;」
ガシガシと頭を掻いた操が軽快に石段を駆け下り下につくとまずを右を見て次に左を見た
「どっちいったんだあの馬鹿」
無意識に【神様の言うとおり】のしぐさをしていた指が左を指してとまると操が駆け出す
明日の漁で使う海水を運んでいた櫛引のおっちゃんのリヤカーの横をすり抜け落ちていた空き缶をよけて海岸線を操が京助を探す
途中に会ったおばちゃん達に聞きながら探すも京助の姿は見つからずにとうとう区域の境目までたどり着いた
「どこいったんだ…;」
腰まで海水に浸かった夕日がさっきより濃いオレンジで操を染める
「逆…だったんかな…くっそ」
荒くなっている息を整えながら操が呟きもと来た道をまた駆けていった
カモメの鳴き声が波の音と重なって聞こえる
時たま横を通る車が歩道が無い道路を走っている操を避けて左にふくらんで追い越していった
栄之神社の石段鳥居が見えてきたころ数少ない街頭にパパッと明かりがついた
いつのまにか夕日の姿はなくなっていて水平線に沿って一直線に伸びたオレンジの光もだんだんと消えていく
石垣に手をついて呼吸を整えていた操が顔を上げると三本先の街頭の下に誰かが立っているのが見えた
足を引きずって亀か?というくらいのトロトロ歩きでこっちに向かってくるその人影に向かって操の足が動き駆け出した