【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら
「あれ? 京助は?」
「知らないわよ?」
前髪をターバンであげた操が右足で左足の脛をぼりぼり掻きながら聞くとそっけない返事が来た
「さっき散々呼ばれてたじゃない?」
「いや…そうなんだけどさ;」
操が気まずそうに母ハルミの質問から顔をそらす
「アンタ…また無視したんでしょ」
「…まぁ…ちょーっと詰まってたんでー;」
操の言葉に母ハルミがため息をついた
「操…」
「わかってるってーの;」
名前を呼ばれた瞬間操が逃げるように茶の間から駆け足で遠のいた
仏間から向こうの和室までぶっ続けで開け放たれた襖のよしかかって縁側にぶら下がる風鈴をぼーっとみながらずるずると畳に尻をつけて足を延ばす
頭ではわかてるんだ俺もそうだったから
構って欲しかったから構ってやりたいって思うんだ
でもなんだろうな…大きくなるにつれて思うように体が頭で考えていることをできなくなってる
「…帰ってきたら…スイカのでかい方やろっかな」
庭先のビニールプールで泳ぐスイカを見て操が呟いた
「…慧喜…いつ帰ってくるのかなぁ…京助明日早起きするつもりなのかな?」
浴槽の縁に顎を乗せて悠助が呟く
「明日晴れるかなぁ…」
換気のために少しだけ開けてある窓から聞こえる止みそうにない雨の音
「てるてる坊主つくろうかな……うんそうしよう!!」
バシャっとお湯の中で手を叩いたせいで悠助の顔にお湯がかかった
作品名:【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら 作家名:島原あゆむ