【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら
「そうか…やはり阿修羅は知っていたのだな…まったく…」
迦楼羅がため息を吐いて言う
「かるらん駄目駄目じゃん」
「やめんか! たわけっ;!!」
ぺしぺしと南が迦楼羅の頭を叩く
「阿修羅はつかめないやつだからね敵にしたら竜より用心しないといけないかな」
柴田がハハッと笑いながら言うと意味がわかってるのかわかってないのか制多迦がヘラリと笑い頷いた
「…阿修羅…か」
矜羯羅がさっき阿修羅に聞かれた質問を思い出し何かを考え込む
「阿修羅の考えていることはワシにもよくわからん…ただ知識は誰よりもあることは間違いないワシよりもしかしたら竜や上よりあるかもしれん」
「そうなの?」
「あ…ええ…阿修羅はかなりの知識がありますからね」
「おいちゃんよりも?」
烏倶婆迦が乾闥婆の服をくいくい引っ張って聞くのを見た迦楼羅の眉がぴくっと動く
そんな迦楼羅の肩を制多迦がポンっと叩いてヘラリと笑った
「…何だ…?;」
迦楼羅が聞くと制多迦が迦楼羅の頭を撫でる
「やめんか! たわけっ!!;」
怒鳴ると同時に迦楼羅の口から炎が出た
「うるさいよ」「うるさいですよ」
矜羯羅の足が制多迦の頭を踏み付けて乾闥婆の手が迦楼羅の前髪を引っ張った
「賑やかやなぁ」
ハハッと中島が苦笑いを浮かべる
「京助が助かるかもってだけで…こうも空気かわるもんなんかね」
「若も泣いてませんしね」
坂田が口の端をあげて言うと柴田がにっこり笑っていうと坂田が肘鉄を柴田の腹にのめりこませた
「やっぱりいいわねこう…たくさんにいるって」
隅の方で眠るちみっこ竜を見ていた母ハルミがなんだかしみじみ言う
「分け合えるものが多くて…嬉しいことも悲しいことも」
「だからハルミは大家族が好きなの?」
鳥倶婆迦が聞くと母ハルミが微笑んで頷いた
「ホラ、緊ちゃんが来る前はこの広い家に私と京助、悠ちゃんとコマイヌだけだったじゃない? …その状態で今みたいになったら…ってね考えちゃったら…ごめんなさいね」
目尻から滲んできた涙を母ハルミが指で拭いまた笑顔を上げる
「いてくれて…ありがとう」
「ハルミさん…」
その場にいた一同が言葉をなくした
作品名:【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら 作家名:島原あゆむ