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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら

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「あ、緊ちゃん」
部屋へと向かい小走りで廊下を進んでいた緊那羅が名前を呼ばれて足を止める
「…悠助?」
パタパタと悠助が緊那羅に駆け寄る
「慧喜がいないの」
「え…」
ハッとして思い出す
「悠助…慧喜…は…」
それ以上言葉が続かずに緊那羅が黙り込むと悠助が首をかしげた
「トイレにもいなかったしお風呂にもいなくて…」
「慧喜は…」
「慧喜はちょっと空に帰ってるんだよ…」
後ろから聞こえた声に緊那羅が振り返る
「矜羯羅…」
ゆっくりと悠助の前まで歩きしやがんだ矜羯羅が悠助と目線を合わせて微笑む
「ちょっとやることができてね…」
「そうなの…? いつ帰ってくるの?」
悠助が矜羯羅に聞く
「いつかはわからないけど…大丈夫…ちゃんと帰ってくるから」
「…うん」
悠助がしょぼんとして頷くと矜羯羅がその頭を撫でた
「大丈夫…慧喜はちゃんと帰ってくる」
一瞬険しくなった矜羯羅の顔
慧喜が指徳に連れて行かれたことを知らない悠助に矜羯羅がめいいっぱい優しい嘘をついた
「ハルミママさんが探してたよ…」
「ハルミママが? うん!!」
パタパタと悠助が矜羯羅の横を通って走っていくのを見ながら矜羯羅がゆっくり立ち上がり緊那羅の方をむいた
「悠助に慧喜のことは…」
矜羯羅が人差し指を口元にあてて内緒、と言うポーズをした
「あ…うん…」
緊那羅が頷く
「緊那羅」
部屋に向かおうと自分の横を通ろうとした緊那羅の肩を矜羯羅がつかむ
「なんだっちゃ? 話ならあとから…」
「君なら京助を助けられるかもしれないんだってさ…」
さっき阿修羅から話されたソレを矜羯羅にもいわれた緊那羅が頷く
「阿修羅もいってたっちゃ…でも今の…このままの私じゃ駄目なんだっちゃ…」
「今の君…? …よくわからないけど…そう…阿修羅が…じゃあやっぱり可能なんだね」
矜羯羅が腕を組んで緊那羅を見た
「君にしかできないこと…いくら僕らが力が強くたって僕らにはできないこと」
矜羯羅が一歩踏み出すと廊下がキシっとなる
「阿修羅から聞いていたなら僕が話さなくてもいいね…皆待ってるから」
「え…? 皆って…」
緊那羅がきょとんとして首を傾げる
「…今自分にできること…探して待っているんだよ僕らはね…」
ポンと緊那羅の肩を叩いた矜羯羅が背を向けて去っていった
「自分に…できること…」
矜羯羅の背中を見ていた緊那羅がきゅっと唇を噛んで小走りで部屋に迎った
タンスの一番上の引き出し
小さな箱を手に取るとソレをじっと見た緊那羅がまた小走りで部屋から出ていく
いつもなら風に鳴らされている風鈴の代わりに聞こえる雨音にふと縁側の方を見た緊那羅が足を止めた
和室の隣の仏間に目をやると暗やみの中にぼんやりと見えた白いタオル
緊那羅が仏間に足を進めた